大判例

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東京高等裁判所 昭和40年(ネ)1012号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕株式会社中澄商店が昭和三十六年五月二十九日東京地方裁判所において破産の宣告を受け、被控訴人が破産管財人に選任されたことは当事者間に争いない。

控訴人長野缶詰が破産会社から被控訴人主張の代金債権を譲受けたことは控訴人長野缶詰は第一審において認めていたが当審においてこれを否認し、被控訴人は自白の取消として異議を述べたのでその点について判断する。

<証拠>を綜合すると破産会社は国分商店と昭和二十六年頃から取引があり、昭和三十二年七月頃その取引により国分商店に対し負担することあるべき債務の担保として破産会社所有の不動産に債権極度額五十万円の根抵当権を設定していたが控訴人長野缶詰は右両者間の取引の仲介に立つたもので前記五十万円の根抵権設定に基く取引(A取引と称す)以外の取引(B取引と称す)について保証していたものであるが、昭和三十四年四、五月頃取引額が二百万円に上るようになつたので国分商店ではA取引とB取引との二口に分けて処理していたところ昭和三十五年十二月末頃に破産会社の業績が不振となり昭和三十六年一月頃には国分商店に対してA取引分として五十四万円余B取引分として二百三十数万円の買掛債務を負担するに至り、控訴人長野缶詰は国分商店からその支払方を督促されたので破産会社と協議し同年一月末頃に当時破産会社の有していた被被訴人主張の売掛代金債権を控訴人長野缶詰に信託的に譲渡し右代金債権を以て国分商店に対する債務の支払に充てることを考え債権譲渡証書(甲第一号証)を作成したが当初から右代金債権は破産会社の手で取立てることを約しており、債権譲渡の通知はふじや食料品店一軒丈にした丈で他の債務者には全然通知しなかつたこと、その中に右債権譲渡の方法を取ることを取りやめとし同年二月上旬頃から破産会社で取立てた代金の集金を控訴人長野缶詰に交付し(その額は八十万円)、同控訴人が国分商店に破産会社の債務の支払として交付し、自ら出金して破産会社の債務を弁済したことを認めることができ、右認定に反する各証拠は採用しない。

以上認定事実によると破産会社から控訴人長野缶詰に対する被控訴人主張の債権譲渡の事実はなかつたものというべきで、控訴人長野缶詰の原審における自白は事実に反したものであり、特段の事情の認められない本件では右自白は、控訴人の錯誤に基くものと解するを相当とするので、その取消は有効のものと云うべきである。

以上の判示事実によれば、被控訴人が本訴において否認権の対象とする売掛債権譲渡契約は存在しないばかりでなく、その否認権の対象中に控訴人長野缶詰に対する取立売掛金の交付行為を含むものとしても、同控訴人の交付金の受入れは、同控訴人自身に領得したものではなく、単に破産会社の国分商店に対する債務の弁済としての支払を取次ぐために受取つたものにすぎないので、同控訴人を相手方として、前示交付行為を否認し、交付金相当の金員の返還を求めることはできないものと解するのを相当とする。

よつて被控訴人の控訴人長野缶詰に対する否認権の行使はその余の点について判断するまでもなく失当であり、被控訴人の同控訴人に対する請求は理由がない。(毛利富治郎 石田哲一 加藤隆司)

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